昨今巷を賑わせている「RIZAP」が展開する小型ジム「chocoZAP」。
こちらのビジネスモデルを取り上げていきます。
はじめに小型ジムで代表的な会社と言えば「エニタイムフィットネス(Fast Fitness Japan)」が業界の先駆けとして知られており、主要な駅近に出店しており良いロケーションを抑えることに成功しました。しかし、出店攻勢が一段落ついてからの出店については主にフランチャイズ(FC)で二番煎じの成功を狙った店舗も多いのが現状で損益に合わずに撤退した所もありますが、それを補って余りある出店攻勢で20年4月には47都道府県出店、22年3月には1,000店舗を達成しており留まることを知らず未だにその勢いは止まっていない。この小型ジムの雄が猛威を振るう中でも他小型ジムも出店しており市場はいよいよ飽和状態となり始めた中で、「chocoZAP」が誕生し、且つエニタイムを凌駕する出店攻勢をかけている。小型ジムの中でも最後発と言っても過言ではないのだが、ここまで出店するにはとりわけ勝算があるからに違いない。その勝算とは何なのかを紐解いていきたい。
■出店攻勢の訳「異常な会員増と経営層の焦り」
23年2月14日の2023年3月期 第3四半期決算短信では今年3月末までに300店出店の予定が、事業好調で会員が集まり過ぎて450店の出店へ変更すると公表されています。おそらく初速が良かったので去年の時点で切り替えたのでしょう。
・22年6月末時点:在籍数2.2万人(47店舗/1店舗平均在籍468名)
・23年2月時点 :在籍数29万人
(約350店舗/1店舗平均在籍数828名)
公表されている数値から割り出し、在籍数は13倍超に達しているとのこと。
約8カ月で27万人は異常値と言っても過言ではない伸び幅だったので経営層はいけると踏み
アクセル全開で突貫工事をしているのでしょう。凄い伸びですよね。ただ23年2月時点の出店数は
憶測ですが、それでも平均在籍数が828名というのは多い気がします。450店にしても平均在籍数が644名になるので、それでも多いと思います。おそらく初期費用が安くスターターキットがもらえるというのに飛びついた層が多かったと推測します。
とにもかくにも出店数も会員数も伸びているのであれば、出店してるので利益はともかく売上は増えていると思いきや・・・なんと減ってる??そう減ってるんですよ。実は出店攻勢をかけている理由が此処にもありました。経営層の焦りです。chocoZAPの売上は当然上がっていて年間100億円程、しかし他業態が不振でグループ全体の売上が下がっている状況だから伸びている業態に全ベットをかけている状況。まあ、RIZAPと喰い合うカニバリゼーションが発生している状況なので今後グループの売上は伸びず高利益業態に持っていきたいのでしょう。ただ、エニタイムフィットネスはFC店をメインに運営しており、chocoZAPは直営になるので高利益業態に持っていけるかは不透明な状態が現状。
■利益構造
多く見積もると下記のような感じになるので、現場では賃料やマシン数、賃貸状況により改装費を
極力無くしているので会員数450名あたりが損益分岐なのでしょう。人を使って巧みに経営しているカーブスで300~400名が損益分岐なので、24時間稼働で賃料、維持費、水光熱費がかかる小型ジムであればと言ったところです。
●予測損益分岐:マシン等フルスペック
売上(会費) 1,500千円
会員数:503名
月会費:2,980円(税抜)
原価 1,500千円
賃料 500千円(50坪10千円)
維持費 250千円(監視・警備費)
水光熱費400千円
(電気350千円 水50千円)
動産リース 75~150千円
(マシン数による、フルスペック想定)
減価償却費 0~150千円
(賃貸状況による)
雑費 50千円
(引落手数料等)
※消耗品は軽微の為除外
【マシンラインアップ】
ショルダープレス、チェストプレス、ラットプルダウンコンバージング、バイセップスカール、ディップス、レッグプレス、アダクション、アブダクション、腹筋マシン
トレッドミル、クロスバイク
無駄を徹底的に排除して造り込んだ形で、ロッカーは鍵ナシロッカー、館内BGMナシなどランニングコストを限りなく省いて、且つマシンもスポーツクラブが扱う一流メーカーとは釣り合わない程の
クオリティなので安値で壊れたら交換すれば良いといった発想なのかもしれません。又、スタッフは
いないので会員にフレンドリー会員制度として月会費を値引く代わりに店舗雑用を課す事で対応するといった徹底ぶり。さすがだけど、店舗数が増えていった時に店舗管理が疎かになる気がしてならない。
というか総合スポーツクラブのクレームで清潔度はかなり出ている状況なので疑問は残るが今後の動向に注視したい。
■今後の展開予測
chokoZAPは今後も出店攻勢を強めることは前述の通りで非常に強気な姿勢で2,000店の出店ということもぶちまけてますが、エニタイムですらFC展開で10年で1,000店に到達しています。エニタイムの巧みなところは出店場所もそうですが、マシンラインアップも一流メーカーを惜しみなく使っているので故障等に関しても心配がなく、スタッフがいるのでクリーン面等でも一定レベルが保てているので安心があります。それに対してchokoZAPは立地は手当たり次第出店している感が強く、マシンに関しては造りが簡易的なイメージを受け耐久性に乏しく故障等が発生してくることが予測されます。又、スタッフがいない現場なのでAI型監視があっても何かしらトラブルが発生すること、週2,3回はメンテスタッフが巡回するとのことですが1店舗あたりの会員数からするとメイン利用時間帯の衛生面で厳しくなることが予測されます。この事から顧客満足度が下がり出店が鈍化していくと共に不採算店が増加し大量閉店に追い込まれる可能性が高いと感じます。システマチックにやっており、現状の新店状態では何もないと思います。数年後にマシンの耐久性やクリーン状況などでユーザーの施設利用頻度が落ちる事があればユーザーが離れていき危険水域に陥る為、防止策としてはITやウェアラブルを使った対策を打ち出していますが、無料で配っているものなのでどこまでそれらが効力を発するかも見どころです。RIZAPグループとしてはRIZAP本体とのカニバリもあるので出店攻勢を強めても売上は頭打ちになり、高利益体質に変換できるかが勝負になるでしょう。業界ではRIZAPはパーソナルトレーニングがメインの会社です。当然マーケティング力は弱く外部に頼っており、且つハード面はマシンをはじめコスト減を第一に考え、クリーン面についても利用状況に耐えうるレベルが的確に維持できるかといった現場ならではの状況を本部が汲み取り対応できるかにかかっています。その点、エニタイムについては王道を行き足腰の強い根付いた戦略を築いているので倒れることはなさそうですが、どこまでchokoZAPがやれるかを業界人としても期待を持って見ていきます。システムとコスト削減によるジムがどこまで世の中に通じるか、机上の算段がどこまで通じるかが問われています。
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