フィットネス業界動向~2023年:施設規模と価格~

スポーツクラブの現状

いよいよ2020年3月から猛威を振るってきたコロナも終息に向かい、日本では3月13日からあらゆる業態でマスク着用も任意になることが報道されています。スポーツクラブでも基本マスクは任意になり、より快適に運動ができるようになります。(まあ、当面従業員はマスク着用の可能性が高いですが)
ようやくマスクが外れる事で運動しようという気持ちも上がってきて3月から6月にかけては需要が伸びてくるのではないでしょうか。2020~22年のフィットネス業界は、コロナ下の影響で閉店が相次ぎ、その中で小型ジムが台頭してきましたが、いよいよ大型スポーツクラブの逆襲といったところでしょうか。(前回記事:2022年後半フィットネス業界動向①2022年後半フィットネス業界動向②

さて、それでは2023年フィットネス業界について見ていきたいと思います。

①施設規模

【小型ジム】
現在のトレンドでいうと圧倒的に店舗数を伸ばしてきているのが小型ジム。今年に入ってから「chocoZAP」さんが至る所で出店してきており勢いに乗っています。chocoZAPさんの形態については今後詳しく載せていきますが、おそらくchocoZAPさんが最後発になると予測します。というのは、市場におけるジム数が既に飽和状態になっているからです。日本のフィットネス人口は3%と言われていますが、日本のあらゆるエリアを商圏リサーチソフトを使って調べるとほぼ3%を満たしているエリアが多く、どちらかと言えば飽和しています。今後はマスクが外れて来る春先から徐々に小型ジムの統廃合が進み整理されるフェーズに移行してくるのではないでしょうか。会員の取り合いで会費が目減りし、賃料とマシン等のリース料で経営が押され、無人化していないジムは人件費がかさみ厳しくなると思います。

【総合型スポーツクラブ】
現在のトレンドでいうならば小型ジムとは正反対で劣勢に立たされているのが総合型スポーツクラブ。
コロナ下で会員数が激減したことで売上が落ち、それに対して賃料・リース代・人件費がのしかかったことで利益が悪化し経営維持できなくなった店舗は既に閉鎖に追い込まれました。この流れはまだ引きずることが予測されます。いや、もう既に今の売上で店舗維持できているのだから大丈夫と思われるかもしれませんが、そう甘くはありません。20年から22年にかけて会員数の激減により総合スポーツクラブの大半が値上げをする事でどうにか店舗維持をしてきました。もうこれは生き残るためには仕方ないことでしたが、それでも会員数の減少に歯止めがかかっていないのが現状です。
 更に22年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻による戦争の影響で光熱費が大幅に値上げした事で固定費として見られていた水光熱費が恐ろしいまでに高くなり、プールや風呂を施設アイテムとして持つ総合スポーツクラブは大きな打撃を受けており、ダブルパンチを受けている状態に陥っています。マスク緩和により会員数が戻れば生き残れるかもしれませんが、総合型スポーツクラブは極めて現状存続が厳しい状態です。今年2月10日に大手、東急スポーツオアシスはルネサンスと資本業務提携をして「株式会社東急スポーツオアシス」を設立しルネサンスに株式40%を譲渡する報道がされましたが、この厳しい状況下での経営判断だったと思います。
 総合型スポーツクラブが生き残るには、現状二つの選択肢があると思います。一つは他業界でもされていますが再値上げを実施すること。それも1回目と違い大きく上げることが必要です。というのも以前の日本のトレンドであるデフレーションにより会費を大きく抑えて会員数を獲るという手法でしたが施設規模や従業員数には全く見合っていないことは明白であり、それ相応の価格に戻すことで打開を図ることが必要です。ユーザーにとっては痛い話ですが、プールや風呂を使いたい方は値上げしても致し方ないと思います。風呂会員は銭湯より安く入れるのですから、まあ価格に合ってないですよね。ジムユーザーは小型ジムに流れる可能性は高いですが、やりたい事が出来なければ戻ってくると思います。

②価格

デフレ日本においては低価格がとにかく評価されてきましたが、既にその価格設定崩壊してきました。
各業種ともにデフレ打開策を模索していましたが、いよいよ生活様式から概念を覆すコロナによるインパクトとウクライナ戦争により物流が物理的に止まった事で今まで頼っていた生産ラインが途切れたインパクトによりデフレ打開が加速し、商品に見合った価格への変更を各所で実行しています。フィットネス業界についてはどうかを見ていきたいと思います。

■低価格店舗(~5,000円)
小型ジムが選択する価格帯。こちらはプールや風呂などの水やガスを多く使う施設を有していない為、経営は成り立ちやすく、この価格帯でも経営は立ち行きます。ただ、電気代はかかるのと無人化でない所は人件費もかかるので若干の値上げは必要になってきそうです。年齢層でいうと30歳代前半や筋トレ目的のみの方が今後もウエイトを占めてきます。

■中価格(5,000円~20,000円)
ジム単独のドライ施設であれば上記低価格店舗と同じようになるでしょう。
総合型スポーツクラブであれば、水回りの影響が大きく水光熱費が前年の2倍近く上がり今後も高騰していくことが規定路線となるため非常に経費面で厳しい状況です。様々な経費削減を既にしてきているので現状の売上で受け止めることはできず、会員数増加を狙っていく策か値上策を取らなければ経営は成り立たないでしょう。そのことから価格は多少上がっても払えるユーザーがメインになってきます。又、プール・スパ・スタジオなど総合型だからあるアイテムに魅力を感じている方は通われるでしょう。

■高価格(20,000円~)
高価格帯ジム又は総合型スポーツクラブですが、この価格帯の店舗は会員数は抑えて会費を上げて経営を成り立たせています。ユーザーに見合ったサービスであれば、価格は関係ないという方が多い層でもあります。なので、経営に見合った売上を上げる為には値上げは躊躇せずに行い、ユーザーも惜しみなく払うといったパターンになるでしょう。会員が施設を支えている意識も高く、サービス面が欠けた途端にユーザーが離れるため、人的サービスが常に問われ人件費はそれなりにかける必要がありますが、今後も問題なく存在していくものと思われます。

以上、今回は2023年フィットネス業界動向として「施設規模」と「価格」の切り口で見てきました。この二つはリンクしてる事も多く施設規模=アイテムの種類と置き換えられます。アイテム数が多い程価格は上がる傾向にあります。又、サービスについても人件費をかけているクラブはジム指導等をしっかりしてくれる分、価格が上がる傾向にあります。初めて利用される方にはジム指導等がないと
ハードルが高いと感じる場合が多いので、施設見学などでスタッフが指導してくれるかなどもチェックして選ぶと良いかと思います。要は目的に合ったクラブ選びが最重要で、価格を払っても希望するサービスが受けられないのは本末転倒になるので、それだけは避けましょう。現状、小型ジムは施設規模と価格の相関性は保てていますが総合型スポーツクラブは崩れている状況です。今後、総合型スポーツクラブは施設規模に応じた価格設定に変更され、より目的意識が明確なユーザーとそれを提供する側がより専門性を持ったサービスを提供する形になるでしょう。この形にならない総合型はあらゆる原価高騰とユーザーのニーズに合わずに遅かれ早かれ淘汰されていくことになろうかと思います。これも時代の流れと言えば時代の流れですが、そうならないためにも数十年変わらない業態の転換を期待してます。

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